高級老人ホームの職員配置比率とは?比率の読み方、昼と夜の実際の人数、看護職員の有無、見学で確かめること
高級老人ホームの案内には「2対1の手厚い介護」「1.5対1」といった職員配置比率がよく書かれています。介護保険の基準は「入居者3人に対して職員1人」ですから、それより手厚いという意味です。ただし、この数字には3つの落とし穴があります。常勤換算の合計であって、その時間にいる人数ではないこと。契約上の約束であって、届出の実人数と一致するとは限らないこと。そして、夜間はまったく別の数字になることです。
この記事では、配置比率の計算の決まりを確認したうえで、玉苑に掲載している施設の重要事項説明書から出した実際の数字を示し、見学で何を確かめればよいかをまとめます。
「3対1」は何を割った数字か
介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の人員基準は、要介護の入居者3人に対して介護職員または看護職員を常勤換算で1人以上(要支援の入居者は10人に対して1人)です。看護職員は入居者30人までは1人、30人を超えると50人ごとに1人が基準です。
「常勤換算」は、パートや短時間勤務の職員を、常勤の労働時間に換算して数え直した人数です。計算は「常勤職員の数 + 非常勤職員の勤務延べ時間 ÷ 常勤の所定労働時間」で、所定労働時間が週32時間未満の事業所は32時間で計算します。常勤か非常勤かは雇用形態ではなく勤務時間で決まります。
入居者60人の施設で見ると、3対1なら常勤換算20人、2.5対1なら24人、2対1なら30人、1.5対1なら40人です。

大事なのは、これが24時間・365日の合計を常勤の労働時間で割った人数だということです。2対1の施設に、ある時間帯に入居者2人につき職員1人がいるわけではありません。30人の職員を早番・日勤・遅番・夜勤に分け、週休や有給を回した結果、日中のフロアにいるのは数人です。
契約上の比率と、届出の実人数
入居契約書や重要事項説明書の「介護サービスの提供体制」には、「2対1以上」のように約束としての比率が書かれています。この数字は施設が守ると宣言している水準です。
一方で、重要事項説明書の「職員体制」には、届出時点の常勤換算した実人数が職種別(介護職員・看護職員・機能訓練指導員・生活相談員など)に記載されています。入居者数をこの実人数で割ると、その時点の実際の比率が出ます。
玉苑に掲載している施設のうち、職員体制と入居者数の両方が読める89施設で計算すると、実配置の比率は中央値2.0、四分位は1.7〜2.3でした。1.5対1以上の手厚さが13施設、2対1以上が56施設。基準の3対1より薄い施設はありませんでした。
玉苑掲載データ(2026年9月時点)
契約上の比率と実配置が食い違うのは、めずらしいことではありません。理由はおもに3つです。
- 届出の時点と現在で職員数が変わっている(退職・採用の波)
- 契約上の比率に含める職種の範囲が施設によって違う(生活相談員や機能訓練指導員を数に入れるか)
- 入居者数が変動している(入居率が下がると比率は見かけ上よくなる)
玉苑では、実人数から算出した比率を優先して載せています。契約上の比率と食い違う場合は両方を表示していますので、施設ページの「職員体制」で確認してください。
24時間の実態——日中は4対1、夜間は20対1
常勤換算で3対1を満たしている施設で、実際の時間帯ごとの配置がどうなるか。PwCコンサルティングが厚生労働省の補助事業として行った令和5年度の実態調査では、特定施設の平均で日中は4対1程度、夜間は20対1程度という結果が示されています。
夜間の基準は別にあります。特定施設では、午後10時から午前5時までの夜間帯に、入居者数に応じた人数を前提に、常時1人以上の介護職員または看護職員を置くことが求められます。看護職員の夜間配置は義務ではなく、多くの施設では介護職員が夜勤をし、必要があれば看護師や往診医に電話で連絡する「オンコール」の体制です。
玉苑に掲載している施設の重要事項説明書から夜間の人数を拾うと、夜勤の介護職員は2人の施設が240(最多)、1人が54、3人以上が182でした(n=477)。夜間に看護職員がいる施設は152、いない施設は293で、いるのは34%です(n=446)。入居者数と夜勤人数の両方が分かる101施設で、夜勤職員1人あたりの入居者数を出すと中央値は22人でした。
玉苑掲載データ(2026年9月時点)/PwC「令和5年度老人保健健康増進等事業」報告書
「2対1」の施設でも、夜は職員1人が20人以上を見ている。これが実態です。日中の配置が手厚くても、夜勤が1人という施設はあります。配置比率は24時間の合計なので、夜間の薄さは数字に出ません。
夜間に看護職員がいるかどうかで、急変時の対応が変わる
高齢者の急変は夜間に多く起きます。夜間に看護職員がいない施設では、介護職員がオンコールで看護師や医師に連絡し、指示を受けて救急要請するかどうかを判断します。看護職員が常駐していれば、バイタルの測定や吸引、点滴の管理、医師への報告がその場でできます。
玉苑では「夜間看護体制がある」施設を条件で絞り込めます。掲載施設のうち介護サービス情報公表システムで夜間の看護体制が確認できるものは1,059施設あり、そのうち995施設が「夜間も看護職員が対応できる体制」と公表しています。ただし、この公表項目はオンコールを含む場合があります。常駐なのか、オンコールなのかは、重要事項説明書の夜間の職員配置と、見学時の質問で確かめてください。
上乗せ介護費は、人に反映されているか
高価格帯の施設が2対1・1.5対1の配置をうたう場合、基準の3対1を超える職員の人件費は介護保険の外にあり、「上乗せ介護費」として入居者が全額を負担します。玉苑に掲載している施設で設定のある218施設の中央値は月8.3万円です。
払っている上乗せ介護費が実際の配置に反映されているかは、上で見た実人数の比率で確かめられます。契約上は2対1、上乗せ介護費は月10万円、しかし届出の実人数から計算すると2.6対1、という施設があれば、その差を質問してよい。逆に、実人数で1.7対1を維持している施設の上乗せ介護費は、金額が高くても根拠があります。
人手不足は、比率を薄くする方向に働く
東京商工リサーチの集計では、2025年の介護事業者の倒産176件のうち、人手不足に関連するものは29件で前年より45%増えました。特定技能の介護分野は2024〜2028年度に13万5,000人の受け入れ見込みが設定され、業界団体は上限の見直しを求めています。
高価格帯の施設は人件費を月額と上乗せ介護費で回収できるので、給与を上げやすく、人手不足の局面では相対的に有利です。ただし「配置比率を維持できる」ことを保証するものではありません。人が採れない時期には、契約上の比率と実配置の乖離は広がる方向に働きます。届出の実人数は年に一度以上更新されますので、入居後も重要事項説明書を取り寄せて、比率の推移を見ることをすすめます。
見学で確かめる3つの数字と、人を見る

- 常勤換算の実人数:重要事項説明書「職員体制」の介護職員・看護職員の常勤換算人数。入居者数で割って、自分で比率を出す
- 夜間の人数:22時〜6時の介護職員は何人か。1人あたり何人の入居者を見るか
- 夜間の看護職員:常駐か、オンコールか。急変時に誰が判断し、どの病院に運ぶか
数字を確かめたうえで、現地では人を見てください。職員がすれ違うときに入居者に声をかけているか。入居者を名前で呼んでいるか。廊下や共用部に入居者がいるか、それとも全員が居室にいるか。
時間帯は、食事どきか夕方が向いています。いちばん人手が必要な時間の様子が見えます。日曜の午後など、職員が少ない時間帯にもう一度行けると、なお確かです。配置比率は目安であって、介護の質そのものではありません。数字で絞り、人で決めてください。
出典
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(特定施設入居者生活介護の人員基準)
- 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」
- PwCコンサルティング合同会社「令和5年度老人保健健康増進等事業 高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業 報告書」(みんかい「老人ホームの人員配置基準『常勤換算で3:1以上』とはどういう意味?」経由)
- 東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』倒産 過去最多の176件」2026年1月9日
- 週刊高齢者住宅新聞「特定技能『上限人数見直しを』介事連 外国人材活用で要望」2026年9月16日号
- 玉苑掲載データ(重要事項説明書・介護サービス情報公表システムからの集計、2026年9月時点)